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第7回目の展示は、鷲尾和彦さん・井上有美子さん・岡本由加さん・大八木夏生さんの 4 作品を紹介します。 

 

一日一日の日々が積み重なり、その人の人生がかたちづくられてゆく。

ふたつと無い日々の一断面は、人の歴史においてすべて等しく価値を持っているのではないでしょうか。

ここに展示されている4つの日常の向こうには、それぞれの作家がみつめた奥行きと物語があります。

作品が語る日常が時や場所を越えて今ここにある日常と出会うことによって、私たちは自分の時間を改めて知ることができます。
そして同時にそれは、どんな時でもどんなところでも世界はひた向きに生きていることを教えてくれます。

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鷲尾 和彦   「Station」

2019 年制作  作品サイズ:254 x 305 ㎜

ゼラチンシルバープリント

鷲尾和彦さん(わしおかずひこ・1967年生まれ)が撮影した一枚の写真には、瞬間の向こうに写り込む人々の人生や物語が表現されています。その写真がこのもう一つの駅で出会うことによって、私たちひとりひとりの物語に反射されます。写し出された異国の駅とこの駅は「何が違うのか」ということのその先に「何が同じなのか」ということを教えてくれます。

 

「2015 年 9 月 9 日、オーストリア・ウイーン西駅。故郷を後に幾つも国境を越え、西ヨーロッパに辿り着いた人々の波に突如として呑み込まれた。いつ列車は来るのだろうか。誰もがじっと待ち続けていた。いま、その姿は、私たちの日常に重なる。過去はいつでも未来を孕んでいる。「写真」は過去と未来をトランジットする手段なのだ。」 鷲尾和彦

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井上 有美子  「金の糸をつむぐ部屋」

2015年制作 作品サイズ:371 × 453㎜

麻布に綿糸、絹糸

井上有美子さん(いのうえゆみこ・1975年生まれ)の刺繍で縫い込まれた糸の色は、それぞれが絵の具の様に混ざり合うことは決してありません。それは時と時が混ざることがないのと同じように、痕跡は積み重ねられ緻密に表現されます。「糸で描く」と語る作家の親密で静かな行為の集積はやがて説得力を持って観るものに迫ります。

 

「グリム童話『ルンペルシュティルツヒェン』からイメージした作品です。わらを金に変えるという物語ですが、ストーリーより金の糸でいっぱいになった部屋の様子が目にうかび、描きたくなりました。ひたすら手ししゅうで制作しています。『糸で絵をかいたらどんなだろう』という思いつきから、身近な手芸材料である糸を画材道具として、作品制作を続けています。ステッチも技もなく、単純な刺し方です。わずかの根気と想像力だけで制作しています。」 井上有美子

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岡本 由加 「かぼちゃ」

1995年制作  作品サイズ:497×651mm

木炭紙に木炭

岡本由加さん(おかもとゆか・1973年生まれ)の作品は作為を感じさせないシンプルな構図と筆跡によって強力な画面を生み出しながらも、一方ではどこか穏やかさも感じさせてくれます。絵は木炭の黒一色で描かれていますが、その黒はとても深く、とても豊かです。それは岡本さんとかぼちゃと向き合った作家と絵の関係の深さ、作者が見つめる日々の重なりの豊かさではないでしょうか。

「1990年代後半、当時入所して間もなかった岡本由加は、みずのき絵画教室(1964~2001)の新生として講師の西垣籌一(故人)の期待を集めました。教室に参加するようになって二年足らずで頭角を現した岡本ですが、そこには非常に根気強く取り組まれた練習の日々があり、ひとつのモティーフを約一年間描き続けたこともあったといいます。激しさ、逞しさ、粘り強さを持ち味とした木炭画は岡本の代表的な技法で、何回も塗り重ねられて生まれる漆黒の表現や、モティーフの野菜が腐敗する姿まで捉えた作品も残されています。」 

みずのき美術館 奥山理子

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大八木 夏生  「新開地を繋ぎ止めて #3」

2020 年制作  作品サイズ:606 x 803 ㎜

パネルにアクリル絵具、カッティングシート、シルクスクリーン

大八木夏生さん(おおやぎなつき・1991年生まれ)は日常の中に潜む「的を得ないもの」を「得よう」と専心しているのではないでしょうか。主役を置かず遠近を並列させた画面、どこか距離を置いたような視線と技法は、観るものを少し不安にさせ、つかみどころを見失わせるようです。しかしそれは同時に物事の優劣や起伏をリセットさせ、フラットに見せてくれます。そこから私たちの思考は再出発することになるのです。

「私の制作は路上の『何だ、これ』の写真から始まります。例えばそれはテープの塊の写真です。何故それを記録し、何を見たのか、自身の無意識の行いについて知りたいという欲求があります。写真を通し間接的に捉えたことで現れた引っかかりがあるように、複数の方法で形作っていくことで新たに明らかになるものがあるのではないかと考えています。」 大八木夏生

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