時の戯れ
 
SOU JR-Sojiji Station Art Project
 
第4回展示
2019年9月29日ー2020年3月末

SOU第4回展示は「時」にまつわるものをテーマにします。

多くのアーティストは様々な「時」について表現をします。瞬間の感情について、二度と体験できない記憶について、多くの物語について、変わることのない永遠について。作家はそれらを描写し、変容させ、新たな創造を試みます。「時」を見つめ、歓び、憂い、願い、戯れることから作品は生まれます。それは誰もが持っているかもしれない、今流れている時間を戻したり止めたりすることへの願いかもしれません。 今回は様々な視点での「時」への関わり方を読み解いていきます。

 

第4回目の展示は、安田知司さん・濱中徹さん・髙倉大輔さん・松井智惠さんの4作品を紹介します。

松井智惠 「『青蓮丸、西へ』2018 道後オンセナート」

2014年制作 作品サイズ:256×360mm

紙に水彩、ペン

松井智惠さん(まついちえ・1960年生まれ)は80年代からインスタレーションや映像作品を制作してきました。またそれらと並行してドローイング作品を継続して制作しています。「絵を見た友人の言葉が鍵になり、物語はほろほろと生まれた。出品作は下書きでもないし、完成された一枚の絵でもない。物語に近く、独立してしまった絵である。小さな絵を日々一枚描いてSNSに出して8年。自他共に娯楽場所になればと始めた。漠然とした1日の空間の中で、今日も小さな紙を茶ぶ台の上に置き、身近な画材を選ぶ。」と作家は語ります。

松井さんの淡く儚いドローイングは大きな時間の一断面として生まれ、そして新たな物語の起点となります。日常的に描かれる一枚の絵は、昨日(過去)・今日(現在)・明日(未来)へとつながる時の流れを想像させ、何度も読んだ絵本のように見るたびに違うイメージが浮かび自由な世界を広げます。 

髙倉大輔 「Magic Hour」

2016年制作 作品サイズ:420×594mm

デジタルCプリント

髙倉大輔さん(たかくらだいすけ・1980年生まれ)の作品は、ある瞬間を切り取ったような場面を写真に定着させているように見えますが、実はとても時間をかけ入念に構成された作品です。一人の役者を何パターンも撮影し、それらを合成してひとつの場面を作り上げます。作者は、「私は過去の演劇活動の経験をベースに写真作品を制作しています。代表シリーズの”monodramatic”は一人芝居をモチーフに、人間が持つ多面性や多様性、可能性、そこに生まれる物語を描く作品シリーズです。その中の一作品”magic hour”は、映画という魔法の光の中で沢山の自分が解放される一人の女性を描いています。」と説明します。

髙倉さんは人の持つ感情や記憶を翻訳し、新たな場面を生み出します。それはどこにもない、ある「時間」を創造することではないでしょうか。 

濱中徹 「歌を聞きたい」

2009年制作 作品サイズ:363×515mm

イラストボードに水彩・鉛筆

濱中徹さん(はまなかとおる・1948年生まれ)の作品は絵を描くための筆記具、おもちゃのコマ、カメラ、時計などこだわりのある大切なモノに囲まれながら制作します。

濱中さんは作品について「絵の真ん中の鉱石ラジオからかすかに聞こえてくる歌を、カエルや草が寄り添って聞いている姿を描いています。赤いところがチャンネル、銀色のところがアンテナです。」と語ります。人と自然・物が共存するための距離感を示すかのようにモチーフと空間が心地よいバランスで描かれ、大切なモノを愉しむ濱中さんのユニークなモチーフの背景には、遠い記憶に基づくイメージが生成される時間の厚みが内包されています。丁寧に観察し、濱中さんの視点で描かれたリズミカルな形と優しい色合いは詩や歌をも感じさせ、ひと時ひと時を慈しむ心を教えてくれているようです。そこにはふと昔を懐かしむような安心感や、ゆるやかな「時の記憶」を思い出させてくれます。 

安田知司 「1.054ppi_30」

2018年制作 作品サイズ:410×530×20mm

キャンバスに油彩

安田知司さん(やすだともし・1985年生まれ)のモザイク状の作品は、一見すると何が描かれているのかわかりません。しかし離れてみると次第にあるイメージが浮かび上がってきます。作者は意図的に認識することの境界線を生み出し、鑑賞者にその境界線を横断させます。「みる」から「みえる」までの時間経過を楽しませてくれる安田さんの作品は、普段は無意識に行っている「見る」「視る」「観る」といった行為を改めて意識させてくれます。

安田さんは語ります。「色面構成から浮かび上がる風景と、それを見せる事を妨げるように表面に塗られた筆跡、色面単体の存在がせめぎ合い、何を見ているのか分からなくなる。見ることは目の前にあるイメージと経験から思い起こされる記憶が繋がり、はじめて認識できる。その一連の過程を揺さぶる事は、リアルが曖昧な世の中に必要だと思う。」

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