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Walking
 
SOU JR-Sojiji Station Art Project
 
第5回展示
2020年3月29日ー2020年9月末

昔の人は本のなかをじっくり自分の足で歩いたのです ー三島由紀夫『文章読本』

 

第5回目の展示は「歩くこと」をテーマに、宇仁英宏さん・鈴木崇さん・古畑大気さん・THE COPY TRAVELERS の 4 作品を紹介します。

歩くことは考えること、思いがけないものに巡り合うこと、肌で感じること。 作家は試行錯誤の中を歩き、画面の中に自由を求めてさまよい、探求を重ねて未開の地を発見します。それぞれの 作品のなかをじっくり歩くと、表現の広がりと奥行きの先に、ある光景や場所に出会うようです。自分の感覚を確かめるように、見るものひとりひとりの歩みの中から多様な世界を感じていただけたらと思います。

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宇仁英宏

「滝II (前田真三写真集を参考に)

2010 年制作  作品サイズ:608 × 728mm

キャンバスに油彩

宇仁英宏さん(うにひでひろ・1978 年生まれ)の作品は、シンプルな構図に大胆な色彩で独自の風景を描き出します。 大きく4つに分割された、色面やストライプ状の模様、リズミカルに描かれたマチエールはそれぞれ違う表情でお 互いが影響しあい豊かな画面を生み出しています。荒い筆跡や盛り上がった絵の具の重なりは抽象的な表情を見せながらも、流れ落ちる滝や光る水面は音や映像となって情景が浮かび、まるで自然そのものの中に身を置いているようです。 アトリエ・ウーフの酒谷先生はこう語ります。「流れおちる滝は、輝く破片となり、水面に散りばめられてゆったり と流れていく。とどろく水の音もまた、優しいせせらぎに変わり、やがては静寂にのみこまれていくだろう。動か ら静へ、奔放から繊細へ、一枚の絵の中に移りゆく時間を描いた宇仁英宏の滝は、この世のどこにもない風景の中 に力強く存在している。」

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鈴木崇  「BAU-group,Toronto Ver. 」

2015 年制作  作品サイズ:710 × 505mm

デジタルピグメントプリント

鈴木崇さん(すずきたかし・1971 年生まれ)は、写真を通して『みることとは、知ることとは』を鋭く問いかけます。 この『BAU』シリーズの作品は日常のありふれたものを別の意識へと変換させます。明確さと同時に不可解さを併 せ持つこの被写体は、作品の前に立つ鑑賞者たちが必ずしも同じ感じ方をしているわけではないと教えてくれます。

「私は、見るときに生じる認識のズレをテーマに作品制作を行なっています。『BAU』シリーズでは、カラフルなス ポンジを即興で組み合わせて膨大なパターンやフォルムを作りました。この作品は、日用品であるスポンジとは別の何かを見る人に想像してもらう為のスイッチのような作品だと思っています。これらの多様な造形から見えてくるものが、観る人それぞれが自由に心に浮かべる何かの種になればと思います。」と作家は語ります。 これらのスポンジでできた構造物は、鈴木さんの『みること・知ること』への自由な想像が尽きることのないユニー クなコレクションのようです。

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古畑大気  「お天気 」

2018 年制作  作品サイズ:6124 × 6125px(ピクセル)

デジタルCプリント

古畑大気さん(ふるはたたいき・1987 年生まれ)のオリジナル作品は、パソコンで描かれたデータそのものであり、 物質としての支持体を持ちません。発表や展示に応じてデータをキャンバスに写したりプリント出力をします。本来、 実体を持たない浮遊したイメージは、まるで重力から解放されたような軽やかさ、保たれた距離感、曖昧さを曖昧 のまま留めているようです。 作家は、「建築や土地への興味から、気になる場所や建物をメモのように写真で撮り貯めています。その写真の中からまあこれはというものをパソコンの無料画像編集ソフトを使って線と色面のみで情報を整理しながら描きます。 主に人工物で構成され、画面の中に写る自然物は最低限の許容できる範囲のみ描きます。同じ景色が反復するように画面上に繰り返し配置したりもします。」と語ります。 それはまるで私たちが不意に出会う、確かめることのできない『記憶』や『印象』そのもののようにも思えてきます。  

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THE COPY TRAVELERS

「THE COPY TRAVELERS のピンボールの魔術師 」

2020 年制作  作品サイズ:2600 × 3383mm

インクジェットプリント

3 人のアーティスト(加納俊輔・迫鉄平・上田良)からなるユニット、THE COPY TRAVELERS(ザ・コピー・トラベラー ズ・2014 年結成)は、複製を目的とした媒体、コピー機やスキャナなどを使い作品を生み出します。それは版画や写真の解釈を拡張・進化させたものと言えるでしょう。オリジナルであることの意味から解放された表現は、「ほんもの」と「コピー」の間を自由に冒険します。

作者は、「本作品は、デジタルコラージュしたイメージを貼り付けた板の上に様々なオブジェを配置し、高解像度スキャナーで読み取り、そのデータを壁面大に拡大印刷したものです。打ち上げられたボールがターゲットに当たり、 軌道を描きながら動く。このようなピンボールの構造から着想を得た本作では、スキャナーによって様々なイメージ、 オブジェが混在するピンボール的コラージュ空間を平面へと圧縮し、拡大印刷を導入することで、次元やサイズに よる空間やイメージの認識を捉え直すことを試みています。」と説明します。

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